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SHIBUYA109でブランドを育てる:日韓ECのためのポップアップストア実践ガイド

109

 

固定費リスクを抑えながら、認知・体験・売上を同時に獲得する。Kブランドの事例から学ぶ、日本市場で失敗しないポップアップ戦略

はじめに

こんにちは。Datarize CSOのパク・ミンソンです。

Datarizeが昨年から本格的に日本市場へ進出する中で日本のコマースやメディア環境について多くの知見を得てきました。

特にここ数年、韓国ブランドの日本進出が加速し、Kファッション・Kビューティーに対する日本の若年層の関心は過去最高レベルと言っていい状況です。

2025年には約6兆9,300億ウォン規模まで成長した韓国発(KtoJ)クロスボーダー物流市場。

渋谷109をはじめとする主要商業エリアで増加するポップアップストア、そしてSNSを通じて拡散されるKカルチャーの影響力——。

こうした流れの中で、「現場」では何が起きているのか。

本記事では、KtoJクロスボーダーに関心のあるコマース関係者の皆さまに向けて、

渋谷109のポップアップを実際に訪問して得たインサイトと、運営の実務ノウハウを共有したいと思います。


目次

  1. なぜ「今」日本でポップアップストアなのか
  2. SHIBUYA109とは:日本トレンドの“震源地”
  3. SHIBUYA109ポップアップの圧倒的な強み
  4. 韓国ブランドの成功事例分析
  5. ポップアップストア運営 実践ガイド
  6. よくある質問
  7. Datarizeと進めるSHIBUYA109進出

 

1. なぜ「今」日本でポップアップストアなのか?

急成長する日韓クロスボーダー市場

韓国発クロスボーダーEC物流市場は、2025年には約6兆9,300億ウォン規模に達すると推定されており、今後も拡大が見込まれています。

これは、日本の巨大なリテール市場(約2,563兆ウォン規模)、EC市場(約3,528兆ウォン規模)に韓国ブランドがアクセスするための、非常に強力な“越境展開のハブ”となっています。

特に、日本現地への直接配送・物流インフラが整備されたことで、いきなり自社ECを立ち上げるようなハイリスクな戦略ではなく、

  • まずはポップアップストアでブランド認知を高める
  • 現地での顧客反応をテストする

といったローリスクなアプローチが注目されています。

これは単なるオフライン販売ではなく、体験(オフライン)と購入(オンライン・オフライン)をつなぐ新しいビジネスモデルへの第一歩でもあります。

 

Z世代が牽引するKカルチャー熱

日本の10〜30代女性、とりわけZ世代は、Kファッション・Kビューティーに強い関心を持っています。

K-POPアイドルとのコラボレーションや、Instagram・TikTokを通じたコンテンツが、そのまま購買につながるケースも多く見られます。

特にKビューティーの場合、

  • 店頭での「テクスチャ体験」
  • SNSで見た商品との“接触”
  • その場での即時購入

といった行動パターンが非常に強く、ポップアップストアによるオフライン体験マーケティングの効果が最大化される領域と言えます。

 

渋谷・原宿エリア:ポップアップの“聖地”

渋谷(SHIBUYA109、MAGNETなど)、原宿、表参道といったエリアは、

ファッションとリアルな体験を求める人が集まる、日本を代表するトレンド商圏です。

  • 大型ファッションプラットフォーム(例:MUSINSA)
  • 百貨店や大手流通(例:新世界ハイパーグラウンドとの連携)

といった形での「初進出」事例も増えており、韓国ブランドが日本市場をテストする“最適なステージ”となりつつあります。

 

 

2. SHIBUYA109とは:日本トレンドの“震源地”

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基本情報

  • 名称:SHIBUYA109(渋谷109)
  • オープン:1979年
  • 所在地:東京都渋谷区道玄坂2-29-1
  • アクセス:JR渋谷駅 ハチ公口から徒歩約3分
  • 規模:地上10フロア/テナント数120店舗以上
  • メインターゲット:10〜30代女性を中心とした若年層

 

「109」という名前に込められた意味

「109(イチマルキュー)」という名前は、日本語の語呂合わせから来ています。

  • 「10」→「トー」
  • 「9」→「キュー」

この2つを組み合わせると、運営会社である東急グループ(Tokyu)の音に近くなります。単なる数字の羅列ではなく

ブランドとしてのストーリーが込められたネーミングです。

 

サブカルチャーの発信地から、“トレンドハブ”へ

SHIBUYA109は、かつて日本の「ギャル文化」の中心地でした。現在はそこから進化し、”新しいブランド・スタイルが最初にテストされる“トレンドハブ”として機能しています。

  • ここで火がついたスタイルやブランドが
  • 渋谷全体、さらに全国へと広がっていく——

そんな“拡散の起点”の役割を、今も担い続けています。

 

多様化したファッションレンジ

かつての「ギャル一色」から変化し、現在の渋谷109では、

  • カジュアル
  • ストリート
  • ユニセックス
  • ミニマル
  • フェミニン

など、さまざまなスタイルが共存しています。この多様性は、韓国ブランドにとっても「どのポジションで勝負するか」を柔軟に選べる余地を意味します。

 

3. 渋谷109ポップアップの圧倒的な強み

① 革新的な売上レベニューシェア(R/S)モデル

SHIBUYA109のポップアップの最大の特徴は、高額な固定費をかけずにスタートできる点です。

通常のポップアップ出店では、次のような負担があります。

  • 東京一等地ならではの高額な賃料
  • スタッフ採用・教育・管理に伴う人件費
  • 売れ残りリスクを伴う在庫負担
  • 内装・光熱費・販促費などの運営コスト

これに対して、SHIBUYA109のレベニューシェア(売上連動型)モデルでは、

  • 固定の高額賃料ではなく売上の一定割合をシェアする仕組み
  • 初期投資を抑えながらブランドテストが可能
  • 「渋谷109」というプラットフォーム自体のブランド力で集客が期待できる
  • 売上に応じて費用も変動するためダウンサイドリスクが限定的

とも言えます。デジタルマーケティングでいう「CPA(成果報酬)」に近いモデルで、“成果が出たときに支払う”合理的な構造です。

 

②仲介エージェンシーを挟まない、ダイレクトなコミュニケーション

多くの韓国ブランドが日本進出で苦労するポイントの一つが、複雑な流通構造や中間エージェンシーの存在です。

SHIBUYA109の仕組みは、ここをシンプルにしてくれます。

  • SHIBUYA109の運営チームと直接コミュニケーションが可能
  • 中間業者を挟まないため、意思決定スピードが速い
  • 売上や来店データなども、透明性のある形で共有されやすい
  • 現場の反応に応じて、柔軟に企画・陳列・プロモーションを調整しやすい

 

③佐川との連携による、スムーズな物流オペレーション

日本進出を考える韓国ブランドが必ず直面するのが、「物流をどうするか」という問題です。

SHIBUYA109のポップアップは、

佐川(Sagawa Express)との連携によって、このハードルを大きく下げることに成功しています。

具体的には

  • 渋谷109内・もしくは連携倉庫での現地在庫管理
  • 店頭購入商品の当日/翌日配送
  • 韓国→日本のクロスボーダー配送スキームとの連動
  • 返品・交換を見据えたラクな返品フロー
  • 実績に基づいた在庫モニタリングと再補充

など、単なる“場所貸し”を超えて、物流まで含めたパッケージとして機能しています。

 

④日本ローカルに最適化された決済体験

日本の消費者は、決済手段に対するこだわりも強い市場です。

渋谷109では、こうしたニーズに合わせた決済環境が整っています。

  • 交通系IC:Suica、PASMO など
  • QR決済:PayPay、LINE Pay などの主要サービス
  • クレジットカード:国内外ブランド各種
  • 現金:依然として根強いニーズあり

決済の“ストレスゼロ”は、そのまま購買転換率(CVR)の向上につながります。

 

4. 韓国ブランドの成功事例分析

渋谷109は、ここ5年ほどの間に、韓国ブランドの日本進出プラットフォームとしての地位を固めつつあります。

その中でも代表例のひとつが、最近行われた新世界ハイパーグラウンドのポップアップストアです。

  • 開催期間:2025年10月17日〜11月10日
  • 企画コンセプト:大手流通主導のマルチブランド・セレクト型ポップアップ
  • 参加ブランド:合計8ブランド(うち6ブランドは日本初上陸)
    • 第1弾(8F):epingler, HOLY IN CODE, MONTSENU, MUCENT, THREE TO EIGHTY
    • 第2弾(1F):LETTER FROM MOON, ffroi

特徴

  • 明確なZ世代ターゲティング
  • フロアを変えながらの“2部構成”で、期間中の話題性を維持
  • レシートフォトブース、SNSプレゼント企画など、体験要素を強化
  • フォトスポットを活用したUGC(ユーザー生成コンテンツ)拡散

成功要因

  • 百貨店/大手流通のブランド力で、安心感と信頼性を補完
  • 「複数ブランドから選べる」環境を用意し、来店動機を強化
  • 日本初上陸ブランドにとって、市場反応を一度にテストできる場となった

 

5. ポップアップストア運営 実践ガイド

企画フェーズ(3〜6ヶ月前)

まず押さえておきたいのは、ポップアップはデジタル広告のように“明日からすぐ”始められるものではないという点です。

現実的には、少なくとも3〜6ヶ月前からの準備が必要です。


① コンセプト・ターゲット設計(約6ヶ月前)

  • ブランドのポジショニングを明確にする
  • 想定顧客(年齢・嗜好・購買力・チャネル)のペルソナ設計
  • ポップアップのタイプ選定(単独/セレクト/ファンダム)
  • ブランドの「差別化ポイント」を整理(世界観・価格・機能など)

② 場所の検討・契約(約5ヶ月前)

  • 渋谷109運営チームとの初回相談
  • 希望期間・希望フロアのすり合わせ
  • レベニューシェア条件やサポート範囲の確認
  • 区画の広さ・動線・什器スペースの確認

③ 商品ラインナップと物流計画(約4ヶ月前)

  • 展示・販売する商品のカテゴリ・SKU確定
  • 日本市場向け仕様(サイズ展開、カラー、パッケージなど)の調整
  • 佐川急便との物流スキーム設計
  • 在庫数量の決定(現地在庫 vs クロスボーダー直送)
  • ポップアップ限定/コラボアイテムの企画

④ 空間デザイン・什器制作(約3ヶ月前)

  • 店舗レイアウト・導線設計
  • フォトスポットや体験ゾーンの設計
  • ディスプレイ什器のデザイン・制作
  • ロゴ・サイン・POPなどのブランディング要素制作

⑤ マーケティングプラン策定(約2ヶ月前)

  • SNSキャンペーン(Instagram・TikTok中心)の企画
  • インフルエンサー・クリエイターとのコラボレーション検討
  • プレスリリースやメディア向け資料の準備
  • オープニングイベント・来店特典の設計
  • ハッシュタグ戦略・UGC誘発施策のプランニング

 

実行フェーズ(ポップアップ期間中)

オープン前最終チェック(D-7)

  • 商品入荷・検品・陳列
  • スタッフトレーニング(商品説明・顧客対応・決済フロー)
  • フォトスポットの最終調整
  • 在庫・売上管理システムのテスト

運営中に見るべき指標

  • 日別来店数
  • 購入転換率(CVR)
  • 平均客単価
  • SNSでの言及数・保存数・シェア数
  • 人気商品/死に筋商品の把握
  • 来店者の簡易属性(年代・国籍・購入動機など)

リアルタイムでのチューニング

  • 売れ筋商品の前面配置・在庫追加
  • 動きの悪い商品のディスプレイ変更
  • SNS投稿内容・時間帯の調整
  • 店頭POPやメッセージの微修正

終了後(D+14目安)の分析と次の一手

振り返りポイント

  • 総売上/利益率/ROI
  • 商品別・カテゴリ別の販売データ
  • 顧客属性・購買パターン
  • SNSを含むオンライン反応

次に検討すべきこと

  • 同条件での再ポップアップ実施可否
  • 常設店舗・ショップインショップ化の可能性
  • オンライン販売(日本向けEC)への接続方法
  • 取得した顧客データのCRM活用(リターゲティング・再購入施策など)

 

「今」準備を始めるべき理由

ポップアップは、タイミングがすべてです。2025年現在、SHIBUYA109の好条件なスペースや繁忙期の枠は、

すでに6ヶ月以上前に埋まっているケースが一般的です。

取り逃がしたくないタイミングの例

  • 年末商戦:クリスマス〜年末年始
  • 春シーズン:卒業・入学・新生活需要
  • 夏シーズン:大型連休・夏休み

早く動くことで得られるメリット

  1. カテゴリー内で“最初に記憶されるブランド”になれる
  2. もっともフレッシュな顧客インサイトを握れる
  3. パートナーや商業施設側との交渉で、有利な条件を取りやすい
  4. メディア・SNSで「初の〜」「話題の〜」として露出を取りやすい

MUSINSAやABLYなどの大型プラットフォーム、有名ブランドはすでに動き始めています。

半年後に「やろう」と思ったときには、良い枠が残っていない可能性も十分あります。

 

6.よくある質問

Q1. ポップアップの最低運営期間はどれくらいですか?

A. 一般的には2週間〜1ヶ月が標準です。ブランドの戦略や目的に応じて調整可能です。


Q2. 初期費用はどのくらいかかりますか?

A. レベニューシェアモデルのため高額な固定賃料はありませんが、

内装・什器・在庫・マーケティングなどのコストは別途発生します。


Q3. 在庫管理はどうすればいいでしょうか?

A. 佐川との連携により、現地在庫保管と配送フローを構築することが可能です。

韓国からのクロスボーダー直送と組み合わせたハイブリッド型も検討できます。


Q4. 日本語が話せなくても運営は可能ですか?

A. 渋谷109には、韓国語でコミュニケーションできる担当者もおり、

契約や企画の段階からサポートを受けることができます。

 

7. Datarizeと進めるSHIBUYA109進出

Datarizeは、日本市場で実際に検証されたパートナーシップとオペレーションノウハウを持つ

クロスボーダーの専門チームです。

  • KtoJ物流・通関
  • CRM・リピート施策
  • ポップアップの集客〜顧客データ活用

まで、一気通貫でのサポートが可能です。

SHIBUYA109でのポップアップや、日本進出に関心があるブランドの皆さまは、ぜひお気軽にご相談ください。

Emailminsung.park@datarize.ai

LinkedInhttps://www.linkedin.com/in/minsung-park-36bb7275/

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